新着情報」カテゴリーアーカイブ

英語民間試験利用延期から考えたこと

こんにちは。
個別教育リバースです。

様々な問題を含んだ英語民間試験の利用延期が決定しました。準備をしてきた現高2生の方々には申し訳ないですが、ひとまずはよかったです。
石原賢一駿台教育研究所進学情報事業部長は、「見直しをして2024年度から始めるといっても、数十万人全員に受けられる体制が民間で整わなかった以上、もう民間試験を使うのは難しいだろう。」(朝日新聞11月3日(日)朝刊)と述べています。私も同意見です。

英語民間試験を煽った教育産業関係者は反省すべきです。少し考えれば無理筋の話であるのは誰の目にも明らかなのに、この流れにのろうとしていました。受験生本位ではなく自分たちの利益を考えていたと批判されても反論できないのではないでしょうか。
マスコミの姿勢も問題です。英語民間試験利用延期が決まった途端に批判的な報道をしているように見受けられるからです。一貫性が感じられず残念です。

さて、同時期に東京五輪マラソンの札幌開催の報道もありました。この報道に接して、英語民間試験利用延期と同じ問題を孕んでいると感じました。
両者の共通点は、現状のままで行うと問題が発生しそうなので、一方は実施延期を他方は開催地を変更したことです。

うがった見方をすると両者の問題点は以下のようになります。

① 英語民間試験:全受験生に必要のないスピーキング試験を無理に導入しようとしたために、民間試験を利用するという発想になった。⇒ 全ての受験生に本当にスピーキング試験を課す意味・意義があるのか、ほとんど議論されていない(2019年11月2日(土)朝日新聞社説で同趣旨の提言が見られた)
⇒ 英語民間試験導入の会議は議事録などが非公開であり、利害関係者が英語民間試験導入を熱望したと言われています。英語教育の専門家は入っていなかったそうです。

② 東京五輪マラソンの札幌開催:そもそもなぜ酷暑が続く日本の夏の8月に東京でオリンピックをすることになったのか?なぜ、涼しくなる10月開催ではいけないのか?前回の1964年東京五輪は10月開催でした。
⇒ 五輪のスポンサーであるアメリカ企業の意向から、米国内でスポーツイベントのない8月開催になったと言われています。
両者ともに「受験生ファースト」「アスリートファースト」になっておらず問題です。資本主義社会ですので利権がからむこともあるのは理解できますが、あまりにも当事者を無視したものとなっています。
報道の表面をなぞっているだけではわからないことを書いてみました。このような批判的思考力が2021年以降の入試では問われてくるのです。

スパイが実践している記憶術

こんにちは。
個別教育リバースです。

今日は、暗記・記憶術について述べます。定期テスト前に教科書を眺めただけで、勉強したという生徒がたまにいます。苦手教科を見ただけで覚えることは不可能です。声に出して読み、紙に書いて覚えることが必要です。

語彙力・国語力アップの方法として、音読を推奨している方は多いです。(例えば、藤野雄太『すごい学習メソッド』永岡書店、2017年、p102-p103など)
特に、教科書の音読は効果が高いです。これは英語・国語だけではなく、数学の教科書でもそうです。(もちろん、理科・社会も効果的)口と耳を使うので、黙読するよりも記憶の定着が図れます。
作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏も中学生向けに書かれた勉強指南本の中で、教科書の音読とディクテーションを勧めています。(佐藤優『学びのカタチ』NHK出版、2019年、p70-p73)佐藤氏の勧めるディクテーションは、自分の音声を録音し、それを聞きながらノートに書き取っていくというものです。これは手間がかかりそうですが、音読はすぐにでも始められます。是非、実践してください。

他にも佐藤氏は、視覚から重要情報を記憶する方法として、以下のように述べています。
「そんなとき(注:正確に暗記しないといけない時)には、耳で聞くだけではなくて、映像として記憶するようにしたんだ。つまり、相手がどんなスーツを着て、どんな色のネクタイをしめて、どんな身ぶり手ぶりをまじえて話したか、そのときテーブルの上に何がのっていたか・・・・・・そのぜんたいを「見ておぼえる」。そうすると、ふしぎに相手が話したことも、映像といっしょにしっかり記憶にのこった。
 「記憶したいことを視覚化する」。じつをいうと、これはインテリジェンスの訓練として、いろんな国で採用されている方法なんだ。」(同上、p74-p75)

これは、ロシアの諜報員養成学校(スパイスクール)で行われている記憶術を紹介した本をわかりやすく噛み砕いたものです。(K・Gブーキン『KGBスパイ式記憶術』、水王舎、2019年)
もちろんこの方法を習得するには訓練が必要です。教科書の音読後に、どこに何が書いてあったかをイメージし、思い出せなければまた目を閉じてイメージし続けます。これを繰り返せば、暗記・記憶の定着が格段に向上します。積極的に取り組んでいただきたいと思います。

グローバル時代の教養②(倫理・地学)

こんにちは。
個別教育リバースです。

前回、グローバル時代の教養として「哲学・宗教」を取り上げました。今日はその続きになります。
医学部入試では、物理・化学を選択する受験生が多く、医学部では必須の生物の基礎学力がない医学部生が多く入学してくるということがしばしば問題となります。
同様に、文系学部では日本史か世界史のどちらかしか勉強したことがない生徒が多く、知識の偏りが懸念されています。そのため、2020年からは高校の授業で「歴史総合」という科目が新設されます。(地理や政治経済の選択者も少数ながらいます。)

日本の学校教育で唯一「哲学・宗教」について学べる教科である倫理はセンター試験にしか存在しません。その内容は、社会学基礎・西洋哲学・中国思想・日本思想・宗教など多岐にわたります。グローバル時代にもっとも必要とされる知識であるにも関わらず、センター倫理の選択者しか学んでいません。これは非常にもったいないことです。
最近では大人向けの本として、小寺聡[編]『もういちど読む山川倫理』山川出版社、2011年・富増章成『考える力が身につく ディープな倫理』中経出版、2014年・斎藤哲也『試験に出る哲学』NHK出版、2018年、などが出版され、ビジネスパーソンを中心に売れているそうです。

倫理を学ぶことでグローバル化に対応した知識・教養を身に付けることができます。倫理を高校の必修科目にしてもいいのではないでしょうか。英語のスピーキング試験にかける労力をこちらに振り向けるだけで、日本の人々の国際理解は格段に向上するはずです。

もう一つ、日本に住む我々にとって欠かすことのできない知識・教養が地学です。こちらも倫理同様、センター地学の選択者しか学んでいません。非常にもったいないことです。
なぜなら、日本列島は地震・台風・土砂災害などの自然災害に見舞われることの多い場所だからです。今回の台風19号でも多くの方がお亡くなりになりました。もちろん、中学校の地理や理科の教科書に地震や災害についての言及はあります。しかし、内容的に不十分と言わざるをえません。もっと深く学ぶ必要があり、そのために高校地学は最適なのです。
こちらも大人の学び直しに最適の本を、京都大学教授の鎌田浩毅さんが何冊か書いておられます。『地学のツボ』ちくまプリマ―新書、2009年、『地学のススメ』講談社ブルーバックス、2017年、『やりなおし高校地学』ちくま新書、2019年、など。

倫理・地学の重要性を再認識し学ぶことで、国際交流や自然災害時にもっとも必要とされている知識・教養を学ぶことのできるのです。

入試問題を予想する。

こんにちは。
個別教育リバースです。

先日、源氏物語「若紫」の定家筆の写本が発見されたという報道がありました。(朝日新聞10月9日(水)朝刊)源氏物語には作者紫式部の自筆原稿は現存していないそうです。定家筆というのは平安時代末から鎌倉時代にかけての歌人藤原定家が書写したものということです。
「『若紫』は高校古文の教科書に採用され、研究と教育に大きな影響を与える画期的な発見」とのことです。(朝日新聞10月9日(水)朝刊、山本淳子・京都先端科学大学教授(平安朝文学)の談話)
なぜこの報道を取り上げたかというと、2021年に実施される2020年度の入試古文に源氏物語が取り上げられる可能性が高いと考えられるからです。源氏物語は難解なので、特に難関大学の文系入試で出題される可能性が大です。来年の入試問題はほぼ出来ているはずですので、時期的に再来年が有力です。また、古文入試問題の作問能力のある大学教員は古典文学専攻などに限られています。ですので、このニュースに触発された大学教員が入試問題作成の参考にする可能性は、他の科目よりもずっと高いと思います。

大学入試問題は、時代のトレンドを反映してます。実際、最近の英語入試ではAIについて取り上げた長文が増えてきた印象です。また、世界的ベストセラーのユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』(河出書房新社、2016年)に言及した英文も上智大学で出題されました。(竹岡広信『入門英文問題精講(4訂版)』旺文社、2019年、P36)

2019年は日本史・世界史共に重要な歴史的出来事から100年が経ちます。1919年パリ講和会議、ヴェルサイユ条約、五・四運動、三・一独立運動(100周年)。*1929年世界恐慌(90周年)、1939年第2次世界大戦勃発(80周年)、1949年中華人民共和国成立(70周年)、1979年イラン革命(40周年)、1989年マルタ会談・天安門事件(30周年)もあり。これらに関係した日本史・世界史の入試問題が出題される可能性が高いです。

理科関連ではリチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏のニュースがありました。入試化学では再来年度リチウムイオン電池関連の入試問題が出題されるのではないでしょうか。

いろいろなものにアンテナを張っていた方が余裕をもって受験勉強に望めます。是非、日々のニュースや新聞にも気を配っていただければと思います。

文系と理系の融合

こんにちは。
個別教育リバースです。

今日は、今何かと話題になることの多い「文理融合」について取り上げます。
一般的に高校1年か2年次に文理選択を迫られ、文系を選んだ生徒は数学や理科を勉強しなくなり、理系を選んだ生徒は国語や社会を勉強しなくなる傾向にあります。ただし、国公立大学志望者は、すべての科目をある程度勉強しないといけません。
特に、数学と国語(現代文)はすべての受験生にとって必要不可欠な科目です。
例えば、国語(現代文)をきちんと学んでいないと大学のテキストの内容が理解できないなどの弊害が発生します。また将来、就職活動や就職した後にも文章を読んだり書いたりする能力は仕事で必須となります。
さらに、今あらゆる学問で数学との接合や応用が盛んになっています。かつては、文系の中で唯一数学に関係すると言われていたのが「経済学部」でした。マクロ経済学で微分積分の知識が必要になるからです。しかし最近では、社会学部の社会学や法学部の政治学の授業で統計学の知識が必要になります。また、文学部の心理学科では実験を行いますのでこちらでも統計学の知識が必要になります。それだけならまだしも、最近では文学部の文学科でも数学の知識が必要だそうです。それは計量文献学と呼ばれる学問分野で、文学作品の言い回しなどの分析に使われています。
計量文献学とは、文献本文の癖や特徴を数値化し、文献が書かれた時代や書き手の推定などを行うこと。また、それに関する学問分野。(デジタル大辞泉)
まさか、数学ともっとも遠いところにあると思っていた文学でも数学的なアプローチが広がっているとは驚きです。これ以外にも文理融合の学問として、経済物理学という学問分野があります。経済物理学とは、経済現象を物理学的な観点から研究する学問分野。株式や為替、大量の市場データを対象として、主に統計力学的手法を用い、それらの挙動を分析する。(デジタル大辞泉)

文系と理系の分け方、歴史などさらに詳しいことを知りたい方は、隠岐さや香『文系と理系はなぜ分かれたのか』星海社新書、2018年 をご覧ください。
数学が苦手な生徒さんは、絶対に数学を捨てないでください。文系学部の大学生であっても、就職活動時にSPIという適性検査を受けないといけません。その非言語分野(数学分野)は、小中の算数・数学と高校数学ⅠAの一部範囲から出題されます。リバースでは大学3回生になって慌てることのないように、中学生からしっかりと数学の学習に取り組むように指導しています。

大学入試改革前史~共通一次からセンターへ~

こんにちは。
個別教育リバースです。

来年2020年以降の大学入試改革について世間の注目が集まっています。しかし、現在の大学入試センター試験、またその前の共通一次試験が導入された経緯について我々はあまりよく知りません。今回は、現在の大学入試改革の参考にもなる「大学入試改革前史」について述べます。(池上彰、佐藤優『教育激変』中公新書ラクレ、2019年、P51~P56を要約)

「共通一次試験」は正確には「大学共通第一学力試験」と呼ばれ、1979年1月に導入されました。実施主体は、この試験のために1977年に設立された大学入試センターで、今は独立行政法人になっています。
この試験が導入されるまでは、国立大学の入試は「一期校」「二期校」に分かれて、各大学が独自の選抜試験を行っていました。「一期校」が旧帝大、「二期校」がそれ以外です。実施時期は前者が3月上旬、後者が3月下旬。その結果、「一期校」が本命で、そこに落ちたら「二期校」に行くという序列ができました。

「共通一次試験」導入のきっかけは、1972年2月に起こった「あさま山荘事件」です。
この連合赤軍事件の犯人たちが「二期校」の学生ばかりだったのです。それで当時の横浜国立大学の学長が国会に呼び出され追及を受けたのです。この学長は「当校にはさまざまなコンプレックスを抱えている学生も多く、」などと発言し、それを受けて国会議員が横浜国立大学に視察に行くなどの事態に発展しました。
その結果、「一期」「二期」の区別を撤廃し、全員が一度に受けられるような制度にしようとなりました。すなわち、最初から行きたい大学を選んで受験できるように改めようということです。加えて、旧国立二期校の多くは幅広い学部を擁する総合大学ではありませんでした。そのため入試問題を作る力を持っている教員の数が限られていました。結果的に奇問・難問が多くなり、本当の意味で学力を測るのが難しかったのです。それで優れた教員を集めて問題を作り、全大学一斉の試験を実施するシステムにすれば、そのネックも解消されるのではないかと考えられました。そして、「共通一次試験」の導入が実施されたのです。
しかし、数年もしないうちに「偏差値」によって全国の国立大学は序列化されていきました。その解消を目指して1990年に導入されたのが現在まで続く「大学入試センター試験」です。
共通一次からの主な変更点は、①各大学・学科が必要な科目を設定し、受験生はその中から選択できるようになった。②国公立大学は、二次試験を前期日程と後期日程の二度行うことになった。③私立大学の参加が認められた。指定する科目はどれでも、いくつでもよく多くの私立大学がこの試験を利用するようになった。

以上が、大学入試改革前史のあらましになります。是非、現在行われている大学入試改革について歴史的な文脈でとらえていただければと思います。

「目的」と「手段」の関係

こんにちは。
個別教育リバースです。

先日、テレビ東京の「カンブリア宮殿」に東京都千代田区立麹町中学校長の工藤勇一さんが出演されていました。工藤さんと言えば、①宿題の廃止 ②中間・期末テストの廃止 ③クラス担任の廃止 など次々とラディカルな改革を行っていることで有名な公立中学校の校長先生です。しかも、民間出身ではないというのが驚きです。「既存の学校システム」の中からこのような方が登場するというのはまさに革命的です。詳しくは、『学校の「当たり前」をやめた。』時事通信社、2018年 をご一読ください。非常に参考になりますし、目からうろこのことばかりです。
同時に、すべての公立中学校で工藤さんのような改革を行うのはかなり難しいとも思いました。というのは、現在の公立中学校の管理職は「既存の学校システム」の中で出世した
方々です。ですので、工藤さんのやり方をするには徹底した自己否定が必要になってきます。自己否定というのは、人間にとってかなりのストレスになります。

番組の中で印象に残っているエピソードがあります。工藤さんが若い時、ある公立中学校で生徒がオキベン(教科書やノートを学校に置いて帰ること)をしていたそうです。その学校の教師は毎週オキベンしていないか机の中をチェックし、教科書類を回収するのだそうです。後日生徒を注意し、注意された生徒は次からは怒られないようにまたオキベンするとのことでした。何て無駄なことに時間と労力を費やしているんだろう、と工藤さんは呆れたそうです。
私も工藤さんの考えに大賛成です。仮にオキベンする理由が、教科書を持って帰るのが重いからなら家用にもう1冊ずつ教科書を買えばいいだけのことです。家と学校に1冊ずつ教科書があることで学習効率が上がるなら、保護者は喜んでその教科書代を払うと思います。家に教科書を持って帰らせることが「目的」ではなく、どうやって家で勉強させるかが大切なのです

工藤さんは徹底して物事の本質にこだわっています。形だけの慣行やただの「作業」ではなく、生徒たちに本当の「勉強」をさせています。そのことによって学力が身につき、「生きる力」につながっていくのだと思います。「目的」のための「手段」であって、「手段」のための「目的」ではないのです。
私は、人は幸せになるために生きている という信念を持っています。すなわち、幸せが「目的」、その実現のためにすることが「手段」です。
リバースでは成績アップはもちろん、どうやったら生徒さんが幸せに生きていくことができるかを今まで以上に考え、実践していきます。幸せの定義は人それぞれですが、「学ぶ」ことを通して自己実現するための指導を日々行ってまいります。

誤解している教育用語・教育情報

こんにちは。
個別教育リバースです。

今日は、みなさんが誤解して使っている教育用語・教育情報について取り上げます。
どれくらい正しく理解しているかご確認ください。

「お受験」 ⇒ たまに「中学受験」のことを「お受験」という方がいらっしゃいます。
「中学受験」は「中入試」または「中受」と略されることが多いです。「お受験」とは、「小学校入試」のことを指します。

「最高学府」 ⇒ メディア等でも「東京大学」のことと誤って使われることの多い用語です。「最高学府」とは、「学問を学ぶ最高の機関としての大学。(特に、大学の数が少なかった旧制度下における旧帝大や一部の私立大学の異称)」(新明解国語辞典)のことです。もちろん「旧帝大や」とありますので「東京大学」もこの中に含まれています。

「東大を首席で卒業」 ⇒ 私も最近まで「首席は成績上位5人くらいまでと誤解」していました。自らも東大首席卒の元財務官僚・国際弁護士の山口真由氏は以下のように述べています。
 「東大では、『優』は成績上位3分の1に与えられます。ということは、定期試験の点数でトップを狙わずとも、すべての科目で上位3分の1に入ることを目指せばよいのです。」(山口真由『東大首席が教える超速「7回読み」勉強法』PHP文庫、2017年、P118)
 つまり、山口氏はすべての科目で成績上位33%以内に入ったので「優」が取れ、首席になれたのです。東大首席を売りにする人が多い理由がわかります。

「留学はすごい」の誤解 ⇒ まず、留学には「語学留学」と「正規留学」があります。
「語学留学」は英語力がなくてもお金さえあれば誰でもできます。次に「正規留学」です。例えば、アメリカの大学数は4,000校以上あり(日本は780校以上)、ピンからキリまで様々な大学が存在します。特に注意が必要なのは「州立大学」です。日本の国公立大学と同じではありません。本当にレベルの高い州立大学もあれば、移民に読み書きを教える日本の夜間工業高校のような誰でも入れる大学もあります。後者に入学した場合、当然就職には不利になります。(詳しくは、栄陽子『留学で人生を棒に振る日本人』扶桑社新書、2007年を参照してください。)
また、卒業できなければ全く評価されません。日本のように「東大中退」を評価する国はまれです。もしみなさんの周りにやたら留学を自慢する人がいたら、次のことを確認してください。何大学を卒業したのか?学位は何か? 大学名がわかればどんな大学か調べることができ、大学のレベルを確認することもできます。もしこれにきちんと答えず誤魔化す人なら、信用できないと言わざるを得ません。

英語民間試験活用~世紀の愚策の行方~

こんにちは。
個別教育リバースです。

9月18日(水)に日本英語検定協会による新型英検「S-CBT」のネット予約が始まったという報道がありました。(9月19日(水)朝日新聞朝刊)GTECと並んで多くの受験生が申し込む可能性の高い英語民間試験のため注目が集まっています。しかし、すでに多くの混乱や不満が噴出しているようです。
また、大学入学共通テストで英語民間試験を活用することに「問題がある」と考える大学・高校がそれぞれ65%・89%との調査結果も出ています。(9月16日(月)朝日新聞朝刊1面、河合塾との共同調査「ひらく 日本の大学」)

以前に当サイトでも「英語教育改革は必ず失敗する」のタイトルで記事を書いています。
英語民間試験をすべての受験生に課すのは、本当に問題だらけです。英語教育を実践している現場の9割の高校が「問題がある」と回答しているのが何よりの証拠です。
まさに世紀の愚策としか言いようがありません。

英語民間試験のデメリットは、
①入試の受験料とは別に金銭負担が発生する
②高3の4月~12月の間に2回受けられるが、高3以前に受けたスコアは提出できない。
③スピーキング試験は帰国子女が圧倒的に有利
④離島・僻地の高校生は受験会場へのアクセス等で不利
⑤高校の英語授業が英語民間試験対策になってしまう
などがあります。

ただし勘違いされては困るのですが、私は今回の2021年以降の大学入試改革の方向性についてはおおむね賛成です。例えば、大学入学共通テストで数学Ⅰと国語に記述が導入されるのや英語リスニングの配点がリーディング(筆記)と同じ点数になることには賛成です。

私の考えは、英語民間試験を活用することをやめ、大学入学共通テストの英語の試験にライティングを導入するのが一番いいと思います。数学Ⅰと国語に導入するのですから、英語に記述を組み込んでもいいはずです。スピーキングの試験を導入しなくても、ライティングだけで受験生の英語力は完璧に測ることができます。「書けないのにしゃべれる」ということは絶対にありません。

日本の大学の講義や企業の社内会議をすべて英語で行うことを法律で義務付けるならば、英語民間試験活用は必要かもしれません。しかし、ほとんどの国民は上記に反対するはずです。中止は難しいですが、延期を含め文部科学省の賢明な判断を期待します。

北極の氷が溶けると海水面が上昇する??

こんにちは。
個別教育リバースです。

今日は、理科について取り上げます。今回で5教科すべて1つは取り上げました。
現在、二酸化炭素などの「温室効果ガス」の影響で地球の平均気温が上昇して「地球温暖化」が進行していると言われています。実際、日本の夏は年々暑くなっている印象です。

しかし、現在は地球規模の歴史で見ると、「氷河時代」の「間氷期」に相当します。北極や南極に「氷床」がある時代が「氷河時代」なのです。地球の歴史では、「スノーボールアース(雪玉地球)」に何度かなったり、また恐竜の絶滅の原因は隕石衝突による急激な気温低下と言われています。(石渡正志、滝川洋二編『発展コラム式 中学理科の教科書、改訂版、生物・地球・宇宙編』講談社ブルーバックス、2014年、P142~P145)
すなわち、「温暖化」ではなく「寒冷化」こそが生物の絶滅に深く関わっていた可能性が高いのです。

温暖化の原因は諸説あり、原因を1つに決めることは難しそうです。中学理科の教科書には、「地球温暖化が進むと、海水面が上昇して低地が水没したり、洪水や干ばつなどがふえたりするといわれている。」(『サイエンス3』啓林館、P222)として、「図21とける北極海の氷」の写真が載っています。

あきらかにミスリードの写真です。南極大陸やグリーンランドの陸地部分の氷が溶ければ、それによって「海水面が上昇して低地が水没」するかもしれません。
しかし、北極は巨大な氷のかたまりです。グラスの飲み物に入った氷が溶けても、水があふれ出ることはありません。水が個体から液体になると体積が減るためグラスの水があふれ出ることはありません。

「とける南極大陸の氷床」の写真なら適切ですが、上記の理由から「とける北極海の氷」の写真は不適切です。教科書以外の参考書にも、北極海の氷がとけることで「海水面が上昇して低地が水没」との記述が散見されます。
このように、小学生の理科の知識があれば教科書の間違いでも見つけることができます。
義務教育って本当に大切で役に立つと実感できる瞬間です。
ただ私は理科の専門家ではありませんので、もし間違っていれば指摘してください。